早くも混戦の様相を見せている2023年J1リーグ。リーグ戦では5連勝、ルヴァン杯では1試合5得点など好調な戦いもありながら、5月には若きエースストライカーの負傷離脱という、衝撃的な1戦もあったサンフレッチェ広島。

 ここではサンフレッチェ広島OB・吉田安孝氏に、好調のキーマン、印象に残ったゴールを熱く語ってもらった。

(データは全て5月8日の取材時点)

今シーズンはリーグ戦・カップ戦で7試合に先発出場している越道草太(5月17日時点)

◆高精度クロスが話題に!スタメンの座をつかんだユース出身ルーキー

 ルーキーの越道草太も、そのクロスの質の高さで注目を集めました。

 越道のクロスの精度が向上した理由の一つには、駒野友一コーチ(アカデミーコーチ)の存在があるでしょう。FC東京戦での東へのアシストも、非常にレベルの高い、コントロールされたボールでした。カーブのかかった軌道でスピードも申し分のない、まさに現役時代の駒野コーチを彷彿とさせるクロスです。

 駒野コーチがトップチームの練習で軽く指導をしていたという話を聞きましたが、そういったクロスのスペシャリストから直接話を聞くことができたという経験は、選手たちの今後にも生きてくると思います。越道は今シーズンの成長株ですし、まだまだ伸び代もあります。ここからが楽しみな選手の一人です。

 そして、途中出場で結果を残している選手といえば、やはりドウグラスでしょう。

 本人としてはスタメンで出場したいという思いは当然あるでしょうが、福岡戦ではピエロス・ソティリウもしっかりとシーズン初ゴールを決め、FWのスタメン争いは非常にハイレベルなものになっています。

 同じくFWのベンカリファも得点という形ではなかなか結果を出せていませんが、彼の働き、存在は非常に大きなものになっています。試合前半に相手DFがボールを持てばそれを追いかけ、体を張ったハードワークをして献身的にプレーしています。そうしてプレッシャーをかけ続け、相手DFを肉体的にも精神的にも疲れさせたタイミングでドウグラスが投入され、残り数分、またはアディショナルタイムの集中力が切れたところで得点する。

 この一連の流れは、ベンカリファなくしては生み出せないものだと思います。