第9回WBSC女子野球ワールドカップ・グループBが9月13〜17日の5日間、日本、チャイニーズ・タイペイ、ベネズエラ、キューバ、プエルトリコ、フランスの各国代表が、広島県三次市に集って開催される。

 広島県廿日市市を本拠地とする『はつかいちサンブレイズ』からは、攻守でチームをけん引する捕手・村松珠希が日本代表に選出された。女子プロ野球の世界も経験してきた村松にとって、W杯は初の舞台。日本中の注目が集まるなか、7連覇を目指して世界に挑む『扇の要』に、女子野球への思い、そして、大会への意気込みを聞いた。

今年5月のアジアカップでは、コロナ禍で中止となった前回大会以来の代表招集となった村松。大会3連覇に貢献した。

ずっとボールに触れていられる。捕手のポジションは憧れだった

ー村松選手の野球人生について伺います。野球を始めたきっかけは何だったのですか?

「私はもともと、クラシックバレエやヒップホップを習っていたんです。体を動かすことが好きで、男の子たちに混じって外で遊ぶのも好きでした。当時、よく一緒に遊んでいた幼馴染のお兄さんがいたのですが、その子がなぜか土日だけは遊んでくれなかったんです。『なんで遊んでくれないの』と聞くと、『土日は野球習ってるから無理』と言われて(笑)。『じゃあ私も野球しに行く!』とついていったのが、一番最初のきっかけでした。そこから自分でもプレーするようになり、次第に高校野球などもチェックするようになりました。今は捕手をしていますが、当時はショートやサードを守っていたので、明豊高校でプレーしていた今宮健太選手(現・福岡ソフトバンクホークス)が憧れの選手でした」

ーでは、内野手から捕手にコンバートされたきっかけは?

「高校時代に捕手に転向したのですが、それまでも、捕手がやりたいという思いはずっと持っていたんです。試合中、ずっとボールを触っていられるのが魅力的だと思っていましたし、防具もすごくかっこ良く見えていて。ただ、小学生の頃は体も小さかったので、なかなか捕手はさせてもらえなかったんです。そんななか、女子チームでプレーしていた中学生の時に、一度だけ捕手として試合に参加したことがありました。当時チームに捕手がいなかったので、私がやりたいと手を挙げたんです。捕手として一度だけ出場したその試合を、福知山成美高校女子野球部の長野恵利子監督が見てくれていて、『捕手をやってみたら』と勧めてくださいました。そこから本格的に捕手に転向したので、実は、捕手歴そのものは短い方なのではないかと思います。ただ、捕手をやっていなければ、こうして日本代表に選ばれることもなかったかも知れません。長野監督には、本当に感謝しています」

ー女子プロ野球のチームでプレーした経験もお持ちですが、プロの世界と代表活動とでは、やはり違いがあるのでしょうか。

「一番大きな違いは、戦い方だと思います。プロはシーズンを通したリーグ戦を戦い優勝チームが決まりますが、日本代表はトーナメントの一発勝負です。『負けたらそこで終わってしまう』という点が、一番の違いですね。私は、はつかいちサンブレイズに所属する前に阪神タイガースWomenでプレーしていたのですが、その時はリーグ戦を戦っていました。はつかいちサンブレイズの試合日程には、ルビー・リーグというリーグ戦の他、子規記念杯やさくらカップ、全日本選手権大会といったトーナメント戦も入ってきます。最初のうちは、そうした戦い方の違いに慣れるのにすごく苦戦したことが心に残っていますね」

ー日本代表に選出されたことについて、サンブレイズのチームメートのみなさんからは、何か声をかけられましたか?

「チームのみんなは、すごく無邪気に喜んでくれているというか……(笑)。ラフな感じに、『頑張ってきて!』と応援してくれるので、良い感じに私の緊張もほぐれているかもしれませんね」

ー最後に、いよいよ開幕するW杯への意気込みを聞かせてください。

「アジア杯とはまた違う雰囲気のなかで世界を相手に戦うことになりますが、日本の野球を忘れずに、優勝を目指して頑張りたいと思います。代表チームはすごく雰囲気も良いですし、選手全員の『お互いのことを考える』という姿勢がプレーにもベンチワークにも出ているチームです。チームワークの良さを全面に出していけると良いですね。私自身は捕手というポジションなので、代表チームの投手たちの良さを最大限に引き出して、勝利に導いていけるように頑張りたいと思います」

《プロフィール》
村松珠希 (むらまつ・たまき)
1997年7月17日生、大阪府出身、捕手
小学2年から野球を始め、福知山成美高を経て、日本女子プロ野球機構で育成チームとして活動していたレイアに入団。2018年から女子プロ野球チーム・京都フローラでプレーし、阪神タイガースWomenなどを経て、2022年からはつかいちサンブレイズに所属している。2023年、第3回BFA女子野球アジア杯で代表戦に初出場。