2017年8月の第99回全国高校野球選手権大会から3年弱。甲子園の舞台で1大会の個人最多本塁打記録(6本塁打)を更新した中村奨成が、プロ3年目にして二軍で非凡な才能を開花させつつある。

 今季は初の一軍春季キャンプを勝ち取り、ウエスタン・リーグで首位打者(7月20日現在、打率.366)を快走中だ。しかし、ここまでの道のりは平坦ではなく、多くの苦悩と向き合ってきた。はたして地元広島が生んだスター候補は、どのような過程を経て現在地まで辿り着いたのか。ここではドラフト1位指名の2カ月後に収録した、入団直前のインタビューを抜粋してお届けする。
(『広島アスリートマガジン』2018年1月号掲載)

2017年ドラフト後、インタビューに応じてくれた当時の中村奨成選手

─ 指名から少し時間が経った現在、どんな心境ですか?
「日に日に指名された実感が湧いてきています。正式に指名されてからは練習をしていても『さらにやってやろう』という気持ちになっています」

─ ドラフト当日、会見場では表情が崩れませんでしたが、緊張はなかったですか?
「前日まではドキドキワクワクでした。指名していただいて緒方(孝市)監督がクジを引いてくれた瞬間、本当は表情に出したかったですし、笑顔でいたかったです。ですが、自分の中で『これで満足したくない』という思いと、『自分は今からがスタートだ』という思いがありました。先を見るではないですが、やってやろうという思いであの表情になったと思います」

─ 地元広島出身だけに、やはりカープの試合はよく見ていたのですか?
「そうですね。小さい頃から野球がない日は家族や友達と旧広島市民球場、マツダスタジアムにも観に行ったりしていました。その頃は前田健太投手(現ツインズ)が好きでした」