リーグ開幕直後から出場機会をつかむなど、早くもチームの中心として大きな存在感を放った田中聡。しかし5月上旬のトレーニングで故障すると、約2カ月の間、戦列を離れることとなった。復帰戦は7月5日の中国ダービー。さっそく存在感を発揮すると、チームに勝利を手繰り寄せた。新天地でのシーズンを戦うMFが広島で感じた手応えと、自身の課題を語った。(全3回/第1回)
◆サンフレッチェの質に驚き。常に大きな危機感がある
—まずは、移籍を決断した背景から教えてください。
「2024シーズンは湘南で多くの試合に出場し、結果も少しずつ出せるようになってきました。ただ、違う環境でも結果を出すことができれば、選手としてステップアップできる、もう一つ上のレベルに行くことができます。すごく悩みましたが、レベルの高い場所で自分を追い込んでいきたかったので決断しました」
—湘南はU−18からトップチームに昇格したプロ最初のクラブです。思い入れがある分、強い思いを持っての移籍だったのではないですか。
「そうですね。湘南ではどんな時期でも、調子が悪くても試合に出場させてもらいました。とても恵まれた環境でプレーしてきたので、本当に感謝の思いしかありません」
—サンフレッチェでは最初の公式戦である富士フイルムスーパーカップ、AFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)、J1リーグとスタメン出場を続けました。
「加入1年目で少し不安もありましたが、開幕前のキャンプでコンディションが良かったので、練習試合でも自分らしいプレーを出すことができていました。それがシーズン最初からのスタメン出場につながったと思います」
—加入後初得点は、アウェイで行われたACL2・ナムディン(ベトナム)戦でした。88分に敵陣の高い位置でボールを刈り取ってドリブルで運び、相手をかわして左足で決めました。
「アウェイで、自分の良さを出してゴールを決めることができました。90分間を通して良いプレーができて、加入後すぐに結果も出せたので、すごくホッとしましたね」
—対戦相手としてではなく、チームの一員として感じたサンフレッチェの強さは、どんなところですか。衝撃を受けた選手は?
「一緒に練習してみると、選手一人ひとりの質や個の能力が高いことに驚きました。選手層も厚いです。特にすごいと思うのは、佐々木翔選手をはじめとする3バック。自分と同じボランチでも川辺駿選手、中島洋太朗選手、トルガイ・アルスラン選手など、みんなうまくて、チームの完成度も高いです」
—その後もシーズン序盤は先発出場を続け、チームも無敗と好調を持続しました。
「あまり内容が良くない試合でも勝ち切れるチームだと感じました。これで勝点を拾えるのか、という試合もありましたから。ただ、最初は良かったですが、その後の勝てない時期では自分のパフォーマンスも良くなかったので、改善していく必要があると思っています」
—4月29日にはホームで新潟に敗れ、チームとしては6年ぶりのリーグ戦4連敗となりました。
「あの日は終始新潟のペースで、自分たちのプレスがはまらず翻ろうされ、最後に失点してしまいました。課題ばかり出る試合になってしまったと思っています」
—連敗が続いた期間は、チーム全体が自信を失っているようにも見えましたが。
「みんな、頑張っていることは頑張っていると思いますが、おっしゃるように自信を持ってプレーできていなかったのではないかと思います。特に自分のプレーが弱気で、もっと自分からアクションしてボールを呼び込んでいく必要があると感じていました」
—新潟戦の前半は押し気味に進めてチャンスもつくりましたが、後半にペースダウンしてしまった印象です。
「疲れもあると思いますが、プレスの強度が落ちました。前半はパスをカットできていた場面で出足が遅れて、五分五分になるような場面が増えたと思います。自分を含めてボールを奪った後のミスも多く、攻撃にいこうというパスを奪われて2次カウンターを食らったりもしました。そこに関してはもっと練習するしかないですし、恐れずにパスを引き出していきたいです」
—自分のプレーで手応えをつかんでいるところや、課題だと感じているところは。
「ボールを奪うプレーなどディフェンス面は自分の力を出せていると思いますが、攻撃面がまだまだです。ミスが多いですし、ゴールに向かっていく自分らしいプレーが少ない。(7月7日時点)まだリーグ戦でゴールを決めていないですし、そもそもシュートを打てていないので、うまくいっていないと感じています」
(中編へ続く)