カブス・鈴木誠也が好調だ。今季は出場97試合目で100安打に到達し、4年連続100安打の快挙を達成。チームの中軸として躍動している。ここでは、大ブレイクを果たした2016年シーズンを、鈴木自身の言葉で振り返っていく。打率.335、29本塁打、95打点。堂々の成績でベストナイン、ゴールデン・グラブ賞を受賞した4年目の鈴木誠也が、当時抱いていた思いとは・・。
◆大ブレイクを果たした2016年。CSでは悔しさが残った
─鈴木選手にとって、2016年はどんなシーズンでしたか?
「一言で言うと、良い経験ができたシーズンでした。結果自体はあまり意識していなくて、ずっと試合に出続けられたことが僕にとって意味がありました。1年間一軍で出場するということを勉強させてもらったのはすごく良かったです」
─シーズンでは打率・335、本塁打29本、95打点と素晴らしい数字を残されました。
「シーズン中は結果を出さないと試合には出続けられないと思っていたので打率は意識していました。終わってみれば調子の波が少なくできていたと思うので、その点は良かったと思います。でも、クライマックス・シリーズ(以下CS)、日本シリーズとあまり良い結果が出なかったので、あれが今の僕の力なんだと感じました」
─ほぼフルシーズンで続けて試合に出続けましたが、長く感じましたか?
「今思えば短かったと思います。でもシーズン中は長く感じましたし毎日試合後はキツかったです。最初の頃は試合後も打ち込みを続けていたのですが、ずっと試合に出ていると次の日のパフォーマンスに影響して良くないと思ったので、途中から数と時間を決めて練習をするようにしていました。でも自分の中で試合後の素振りは、1日の反省を見直す意味があったので、それは毎日続けていました」
─6月の3試合連続決勝弾から『神ってる』という言葉が鈴木選手の代名詞となりました。
「監督が『神ってる』という表現で僕のことを言って全国区にしてくれて、いろんな野球ファンの方に知ってもらえる機会が増えたことは素直にうれしかったです。ただシーズン終盤は何にでも『神ってる』と使われることがあって、他の人も何かあればそう言われていたので、少し戸惑いはありましたし、一歩引いてその言葉を見ている自分もいました。ただ改めて振り返ってみると、昨季の打撃は神がかっていたというか、確かに奇跡だったのかなと思います(苦笑)」
─シーズン終盤は左肩を痛めた中でプレーしていたそうですね。
「そうですね、痛めたときは正直『終わった』と思いました。8月24日の巨人戦でファウルグラウンドまで打球を追ったときに少し足が絡まってしまって、そのまま打球に飛び込むような体勢になって左肩を亜脱臼してしまいました。とにかく痛くてキツかったですね。腕も上がらない状態でしたが、試合に出たかったですし、他の選手にポジションを譲るのが嫌でした。バットはある程度振ることができたので、できる範囲でやろうと思っていましたし、少しくらいの痛みでは休みたくないという気持ちでプレーしていました。トレーナーさんたちには『鉄人になります』とずっと冗談半分で言っていました(笑)」
─2016年のレギュラーシーズンで、印象に残る試合はありますか?
「優勝を決めた9月10日の巨人戦は一番緊張しました。さすがに『今日勝ったら優勝を決められる』という意識もありましたし、球場の雰囲気も独特だったので、打席に入るときに足が震えました。そんな中で2本ホームランを打てたのは自信になりました」
─では、苦しかったこと、納得できなかったことはありますか?
「シーズン中はそんなにありませんでしたが、やっぱりポストシーズンはキツかったです。自分が打てない原因は分かっていたのですが、うまく体が言うことを聞いてくれないというか、シーズンとは違った、これまでにない感覚でした。シーズンでは少し形を崩されても〝ある程度この練習をしていけば元に戻る〟というポイントがあったのですが、ポストシーズンのときはそれをやっても元に戻りませんでした。練習では良い感じでもゲームになると良くならないことが続いていましたね」
─初の日本シリーズでは悔しい結果に終わりました。
「やはりホームとビジターとの違いをすごく感じました。1点を取るにしてもビジターだと取れない雰囲気になってしまったり、1点を奪うことに難しさを感じました。やはりホームでの声援というのが自分たちにとってすごく大きいものだったんだなと改めて感じることができました。結果的に負けてしまいましたが、正直僕は最後まで負ける気はしていませんでした」
─オフに行われた優勝パレードは大いに盛り上がりましたが、いかがでしたか?
「あれは鳥肌が立ちました。テレビで過去のパレード、他球団のパレードを見てイメージはしていましたが、いざ目の前で迎えるとやっぱりすごかったですね。パレードの後の優勝報告会では日本シリーズ以来、久しぶりに満員のマツダスタジアムを見ることができて、やっぱりいいなと思いました。ジェット風船をグラウンドで初めてやりましたが、僕のやつはあまり飛びませんでしたね(笑)」