リーグ、ルヴァン杯、天皇杯と、タイトル獲得に向けて期待の高まる今シーズンのサンフレッチェ。東アジアE-1サッカー選手権2025韓国大会を経てしばしの中断期間を挟み、8月6日には天皇杯が、10日からはリーグ戦が再開する。ここではOB・吉田安孝氏が、中断期間前までに行われた注目の一戦を解説する。(全2回/第1回)
◆意地と意地がぶつかり合う熱戦。『中国ダービー』での劇的勝利
中断期間を経て、シーズンも後半に突入しました。中断期間中には東アジアEー1サッカー選手権2025決勝大会 (以下、E−1)も開催され、サンフレッチェからは大迫敬介、荒木隼人、川辺駿、ジャーメイン良、中村草太、田中聡の6選手が選出され、アジアの舞台で躍動してくれました。
中断期間直前の岡山戦は、今シーズン2度目の 『中国ダービー』。ホームでの第1戦目は0−1で負けていましたから、サンフレッチェにとっては絶対に負けられない一戦です。試合はナイターでしたが、気温も湿度も高く、しかもサンフレッチェは7月2日の神戸戦から中2日での開催で、選手たちの負担も相当なものがあったと思います。実際、岡山の方がコンディションも良いように見えましたし、超満員のスタジアムには岡山のサポーターもたくさん詰めかけていました。しかし、その完全アウェイの雰囲気のなかでも怯むことなく、選手全員が最後の最後までハードワークした結果、ラストワンプレーで中村草太に決勝ゴールが生まれました。両チームが全力でファイトした、非常に見応えのある試合だったと思います。
あの場面は、3列目の右WB・中野就斗が縦に仕掛けてCKを獲得しました。中野は90分走り切り、この時間帯では足も攣っていたのではないかと思います。そんな状態でも2列目の前田直輝を追い越して縦に仕掛け、相手DFと1対1の勝負に持ち込みました。たまらず相手がボールを蹴り出しますが、プレーが止まった瞬間の映像を見ていると、膝に手をつき肩で息をしていることがわかります。かなり苦しい時間帯だったと思いますが、そこでCKを獲得できたことは非常に大きかったです。
今シーズンはセットプレーが武器の一つになっていますし、木下康介が加入してからは、高さのある木下をターゲットにすることもできています。その木下が頭で折り返したところを、中村が反応して決勝点を奪いました。試合終了の笛が鳴ると、ピッチに倒れ込む選手もいるほどハードな一戦。選手たちにとっては非常に厳しい試合であったことは間違いありませんが、こういう劇的な展開があるからこそ、サッカーには面白さと、そして怖さがあると改めて感じました。
サッカーの面白さは、もちろんプレーの質や華麗なテクニックもありますが、ベースとなるのは選手それぞれの 「負けたくない」という 『意地と意地のぶつかり合い』です。岡山戦では特に、最後の瞬間まで両チームの魂のこもったプレーが出ていたように感じました。まさに、サッカーの醍醐味が詰まった試合でした。
(後編へ続く)