第107回・全国高校野球選手権大会 広島大会の決勝戦が7月26日に開催され、広陵高が3年連続26回目の甲子園出場を決めた。ここでは熱戦が期待される夏の甲子園を前に、カープ戦士たちの高校時代を振り返る特集をお届けする。
今回は、広陵高3年時に夏の甲子園で本塁打を連発し、高校野球ファンに強烈なインパクトを残した中村奨成をピックアップ。高校時代の思い出と、一躍全国区となった3年夏のの甲子園を振り返っていく。(広島アスリートマガジン・2022年8月号掲載記事を再編集)
◆甲子園での本塁打記録よりも、3年夏の広島大会優勝が思い出
小、中学校のときから広陵の試合をテレビで見ていて、『強いな』というイメージでした。全国的にも野球名門校ですし、広島県の野球少年なら『広陵』と聞くと憧れを持つ子も多かったと思います。実際そこに入学できて、1年生のときから背番号をつけて試合に出させていただくことがすごく不安でしたし、入学当時は自分のことで精一杯でした。
高校時代の思い出はあり過ぎます(笑)。練習で忘れられないのが広陵伝統の練習である『45秒』です。ホームベースからライトとレフトポール付近にカラーコーンを置いてできる三角形を、三塁側から時計回りにダッシュして45秒での完走を目指すというものです。1年生のときに初めて走った際のしんどさは、忘れられません。野球の技術的な練習はもちろんたくさんやりましたが、精神的に一番鍛えられたのは、あの45秒ですね(苦笑)。
印象に残る試合も多くあります。周囲の方々からは3年夏の甲子園での本塁打記録をすごいと言われることが多いですが、正直、僕はあまり気にしていない部分があります。ただ、そういう記録をつくった以上、話題に上がることもありますし、覚えていただいていてありがたいことです。
僕の中では3年夏の広島大会で優勝を決めたときが印象深くて、あの時が一番うれしかったですね。1年生の頃から試合に出させていただく中で、2年連続で準決勝で悔しい思いをしていました。僕らの代でも準決勝で負けそうでしたが、突破したときはホッとしましたし、決勝で勝てたときは『やっと広島県の頂点に立てた』という思いがありました。なにより、仲間が必死に応援してくれる中で優勝できて、みんなが泣いて喜んでいる姿を見たときに、いろんな思いが込み上げてきて、忘れられない瞬間ですね。
(後編へ続く)