1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第4回目の特集は、カープ歴代助っ人外国人のインタビューセレクション。

 海を渡ってカープにやってきた助っ人たちは、その活躍だけでなく、ユニークなキャラクターでも多くのカープファンに愛された。ここでは懐かしい外国人選手を中心に、彼らの “広島愛”を改めて振り返る。

 2013年6月にカープに加入したキラ・カアイフエは、一軍初出場の試合で挨拶がわりの本塁打を放つと、続く翌日、翌々日と3試合連続で合計4本塁打を放ち、その大砲ぶりをカープファンに見せつけた。2013年シーズン途中、遅れてきた救世主・キラのインタビューを振り返る。(全2回/第2回)

(『広島アスリートマガジン2013年10月号』掲載記事を再編集)

2013年はシーズン途中の加入ながら、14本塁打45打点をマーク。Aクラス入りに大きく貢献した

◆​大きかったニックの存在

— シーズン途中の加入でありながら、日本球界や、チームに溶け込むのにそれほど時間がかからなかったように感じます。

「私が日本の文化とよく似たところがあるハワイで生まれ育ったこともあって、日本に来てもあまり違和感なくできているのかもしれません。また、チームに早く溶け込むことができたのは、私からも積極的に話かけていますが、それ以上にチームメートが良い人たちばかりで、私が早く馴染めるようにアプローチしてくれたことで良い方向に進んでいったと思います」

— 調整で過ごした二軍の打撃から一軍に昇格してからの打撃は別人のように感じました。

「日本に来て2週間ほど二軍で調整をしましたが、プレーすることから離れていたので、まずはその与えられた期間を有意義なものにしようと思っていました。日本の審判のストライクゾーンや日本の投手の攻め方などを少し勉強できたかと思います。その中でも一番大きな助けとなったのはニック(・スタビノア)の存在です。彼が日本で経験した日米の違いなどをこと細かく説明してくれたので本当に感謝しています。もちろんまだまだ勉強中ですが、自分の力を出せれば成功する自信はありましたし、一軍で好スタートを切ることができたのは二軍での調整が成功したからだと思います」

— 初出場となった7月9日のDeNA戦から3試合連続4本塁打を記録した衝撃度はチームにとっても、キラ選手にとっても非常に大きな意味を持つものだったのではないですか?

「最初の3連戦で良いスタートを切れたことは非常に良かったと思います。あのスタートが周囲のプレッシャー、そして自分自身が自分にかけていたプレッシャーを軽減させてくれたような気がします。ただ3試合で4本の本塁打を打とうと思っていたわけではなく、とにかくチームの勝利に貢献したいと思って打席に入った結果なので、自分にとってもチームにとっても良かったです」

— 好スタートによって相手のマークも厳しくなりましたが、それでも際どいコースの球の見極めができており、非常に選球眼が良い印象を受けます。

「これまでのキャリアの中でも打席内で我慢強く自分が打てる球を待つことができていると思っています。その結果、四球が増えていると思いますし、パワーヒッターとしてボール球に手を出さないことは自分の強みであると思います。一軍昇格当初と比べると、打てる球が少なくなりフラストレーションが溜まることもありますが、仕方がないことなので自分のスタイルは何も変えずにやっていこうと思っています」

— 今季途中から加わったカープ打線の中で、どのような役割を担おうと思っていますか?

「チームが私に対して非常に重要な役割を任せ、大きな期待を寄せていることは十分理解しています。ただ私は、『野球は選手ひとりの力で勝っていくことはできない』とよく言っています。たとえ調子の悪い選手がいても、誰か調子の良い選手が補ってあげればいいですし、調子が悪くてもそれぞれがチームから任された役割をこなすことができれば、チームの良い結果に繋がると感じます。そういった要素が絡んで今の良いチーム状態になっているのだと思います。ただ、カープに来てから自分に結果が出たときにはチームも勝利に近づいていることは感じているので、プレッシャーを自分にかけながら真剣に取り組みたいと思います。そういった自分のスタイルを出して一戦一戦大事に戦っていきたいです」

— 普段からチームメートに積極的にコミュニケーションを図る姿からもチームプレーを重要視することがうかがえます。

「自分にとってはチームメートとコミュニケーションをとることが非常に重要だと思っています。特に私は外国人としてこのチームにやってきたので、ただ単に来ただけではチームに溶け込むことはできません。来日初日から私の方からチームメートに声をかけ、まず自分という人間を知ってもらう努力をしました。それはフィールド上であってもロッカールームであっても変わりません。最も大事なのは野球以外のことでコミュニケーションをとってどんな性格なのか知ってもらうことだと思います」

(後編へ続く)