今季、開幕から好調な打撃をキープし続けてきた堂林翔太。しかし8月に入るとバットは湿り、17打席無安打に陥るなど、キープし続けてきた高打率も3割前後まで下がっていた。

8月に17打席無安打とやや打撃が落ち込んだものの、起用が続く堂林翔太選手。

 だが、今年の堂林は一味違う。8月18日のDeNA戦、2番・サードで先発出場すると4点を追う7回1死二、三塁で、エスコバーが投じた直球をセンター前に弾き返して18打席ぶりの安打を記録。翌日には5打数2安打と複数安打を記録し再び3割超え。8月20日には左翼ポール際に10号を突き刺し、2012年以来8年ぶりとなる二桁本塁打をマークした。

 出番が限られていた昨季までであれば、結果を残すことができなければ二軍降格となっていた。だが今季は春先から好調をキープし、開幕後も一時は4割超えの打率で首位打者をひた走った。結果を残せなければ即二軍、ではなく様子を見る。開幕から1カ月を超える頃には、昨季までとは全く違うレベルで首脳陣からの信頼を勝ち取っていた。

 それを後押しするのが、打撃時における技術面の進化だ。

 これまでは三振の多さと変化球への対応が課題とされてきた。しかし今季は球の見極めも向上し、苦手とされてきた右投手からも本塁打を量産している。

「外の変化球に対して、もちろん振るときもありますけど、前よりもがっついて手を出すことは減ったと思います。それを我慢しながら甘い球を待っている状況なので、結果も出ていると思います」

 開幕前には新井貴浩氏から「バットの角度をギリギリまでキープして最後に回転すること。そこをもう少し意識してみろ」とアドバイスを受けた。練習で実践してみると、すぐに打撃の感覚が上向いた。

 以降は少しでも状態の悪さを感じたときは、原点に立ち還り『最後の回転』を意識しながら微調整を繰り返しているという。

 立ち還る場所の存在があるというのも、今季の堂林の強みとも言えるだろう。

 3割前後の打率をキープしながら、これまで積み重ねた本塁打は12本(9月15日現在)。過去に放った最多本塁打は2012年にマークした14本だ。

 自身の打撃と向き合うことで、8月上旬に陥った不振からは脱却した。覚醒の時を迎えた堂林が、キャリアハイの数字を記録する日もそう遠くはないだろう。