借金が二桁を記録するなど、シーズンの2/3を消化した段階でもカープを取り巻く状況は好転していない。なかでも目立つのが投壊で、チーム防御率は4点台中盤。投打が噛み合わない試合が多く、好調が長く続かないのも今季の特徴だ。

 先発、リリーフともに本調子とは言えないなか、OBの大野豊氏はどのような視点で今季のカープを捉えているのか。テーマを先発陣に絞り、浮上に向けた課題を探っていく。

今季中の復帰が絶望視される大瀬良投手。巻き返しを図る上で、エースの離脱はチームにとって大きな痛手だ。

◆何事も最初からしっかり入ることが大事

 前半戦を折り返し、いよいよシーズンも後半戦に突入しましたが、カープは9月に入っても苦しい戦いを強いられています。その要因について、端的に言うと先発陣が早い回に失点してしまっている点に尽きると思います。

 試合への入り、つまり3回までの失点率が今月は特に高いように思います。いくらリーグ3連覇中に数々の逆転劇を演じてきたカープといえども、ここまで序盤から苦しい戦いを強いられるとなると、なかなか立て直しも難しい部分があります。

 チームを立て直していくには一にも二にも、まずは早い回の失点を減らすことが大切です。初球、初回、カードの初戦、何事も最初からしっかり入っていけば、その後の戦いは自然と有利になっていくものです。

 ただ、そうは言っても左右のエースである大瀬良、ジョンソンが揃って登録を抹消されました。勝ちが計算できる絶対的な投手がいないという状況下では、追いかける展開が増えてしまうのも致し方ないのかもしれません。

 そんな中でルーキーの森下は、比較的安定感のある投球を披露しています。プロの世界に順応しながらよくやっていますし、先日も7勝目は逃しましたがヤクルトを相手に7回4安打2失点との投球で、現在の防御率は2.40と好成績を収めています。良いときはインサイドにもしっかり投げ込めていますし、修正能力の高さも彼の魅力の一つですね。

 今季期待をかけられながら、思うような投球を見せられていない遠藤に関しても課題は試合の入りです。本人がどういうルーティーンを持って試合に臨んでいるかは分かりませんが、結果が出ていないときは何かを変えてみることも必要でしょう。

  私も現役時代を振り返ってみると、決して立ち上がりが得意な方ではありませんでした。先発マウンドに臨むにあたり、どんなベテランであっても緊張しない投手などほとんどいません。つまり、緊張感とうまく付き合っていくしかないのです。

 先発のマウンドに臨むまでは、人それぞれのルーティーンがあるでしょうが、私はブルペンではなくマウンドに上がってからの投球を重視していました。試合前の5球のうち2球は気持ちを落ち着けるため軽く投げて、残り3球は全力で投げる、というように自分の中でルールを決めることで、うまく試合に入り込めるようになりました。

 繰り返しになりますが、ここまで先発陣が早い回に失点しまっていると、どうしても苦しい展開が増えてきます。それだけ大事な役割を任されているという自覚を持って、それぞれ早い回の失点を減らす工夫に取り組み、首脳陣の信頼をつかんでいってほしいと思います。