今年カープが球団創立70周年を迎えたことを記念し、新井貴浩氏にカープファンだった幼少期も含め、カープにまつわる思い出を語ってもらう本連載。今回は1999年に新井氏が放ったプロ初ホームランの思い出と裏話を語り尽くしてもらった。

プロ初アーチについて語る新井氏。プロ1年目の初スタメン試合で放った思い出に残る一発だった。

◆目をつむってフルスイングした結果・・・

 今回のテーマは1999年、僕がプロ1年目に放ったプロ初ホームランです。僕がカープに入団したこのシーズンは、達川光男さんが監督に就任され、大下剛史さんがヘッドコーチとしてカープに復帰されていました。当時の大下さんの厳しさというのはカープファンのみなさんも分かるくらいだったと思います。

 それに加えて僕はプロ1年目であり、大下さんとは駒澤大学の先輩後輩という関係でもあります。だからこそ、あえて厳しくしていただいていたように思います。もちろん厳しい方でしたけど、今当時の自分を振り返ってみると……一軍レベルにある選手ではなかったと自分でも思うんです。それでも一軍に置いてくれて、そして試合で使ってもらえていました。だからこそ、他の選手よりも厳しくしなければならないという側面もあったように思います。あの当時はとにかく無我夢中でした。練習も毎日しんどいし、余計なことを考える体力もないし、一日一日を完全燃焼……そんな毎日でした。

 序盤から一軍で起用してもらっていた僕ですが、当時主砲だった江藤智さんがケガで欠場されていたこともあって6月6日に浜松で行われた中日戦で『7番・ファースト』でプロ初スタメンを果たしました。初スタメンを言われたときには体中に電気が走りましたし、試合前の練習からえずいてました(笑)。本当に「まさか俺が?」という感じしかありませんでした。

 試合前にはヘッドコーチの大下さんに呼ばれて「お前、とりあえず今日はボール球も振ってええけぇ、ストライクは全部振れ! 分かったか!」と言われ、僕は「はい! 分かりました!」と元気良く返事をして、記念すべきプロ初スタメンの試合を迎えることになりました。