新型コロナウイルスの影響で、例年とは大きく異なるスカウト活動を余儀なくされた2020年のプロ野球界。目前に控えた2020年のドラフト会議に向けて、アマチュア球界を長年取材し指名候補選手に詳しい安倍昌彦氏に今ドラフトの注目ポイントを語ってもらった。

昨年のドラフトでカープが単独指名した森下暢仁が新人王の有力候補として活躍している。今年のドラフトではどのようなドラマが待っているのだろうか。

◆今季の指名にスカウトが及び腰の理由とは・・・

 まず、今回のドラフトを語る上で考えなければいけないのが、新型コロナウイルスによる影響です。今年に関して言えばカープに限らず、各球団のスカウト陣が経験したことのないスカウト活動を余儀なくされました。単純に選手たちが実戦でプレーする機会を見る回数が少なかっただけに、スカウト陣としては選手の実力に対して“半信半疑”でドラフト当日を迎えていることでしょう。

 本来のドラフトであれば、夏の段階で各球団のリストに入っている選手(50〜70人程度)をドラフト当日に向けて3、4回程度見ていきます。当然その中で権限を持つスカウト部長などにも見てもらい、そのリストに挙がっている選手を削ぎ落としていき精錬させていきます。しかし今年は上位指名を狙う選手こそ、数回はチェックしているはずですが、それ以外の選手に関して言えば1、2度程度に留まっていたはずです。

 球団としては選手の才能、力に確証が持てないとなると、指名人数を絞らざるをえないでしょう。また今年は球団経営上、重要になってくるレギュラーシーズンの試合運営による収入が激減したこともあり、余計に多くの選手を指名しづらい事情はあると思います。

 このような状況だからこそ、例年にはない異例の取り組みも見受けられました。たとえば8月29、30日(甲子園)、9月 5、 6日(東京ドーム)で行われた“プロ志望高校生合同練習会”です。西日本と東日本で合わせて120名程度の選手が参加するなど、プロを志望する高校生が一同に介した大きなイベントとなりました。ただ正直この練習会が、各球団のスカウト陣に与えた影響は限定的だったと考えます。分かりやすく言えば、エントリーした選手の中で、期待以上のプレーを見せた、あるいはノーマークの選手が活躍したとか、そういうことはほとんどありませんでした。

 今年のドラフトについてファンのみなさんに見てほしいポイントは、各球団ごとの評価が例年ほど並列化されていないだけに、事前の報道で名前が全く上がっていなかった選手が指名されたりするケースが十分に考えられるということです。

 アマチュアの大会が軒並み中止になるなど、スカウトとしては苦しい状況での活動となったはずです。判断する材料が少なかっただけに結果が出ない球団も出てくるとは思いますが、こうした異例の状況でプロ野球界のスカウトが選手の何を見て、どのような指名していくのかという点に注目してほしいですね。