2020年ドラフト会議が10月26日に行われ、投手力の強化を図るカープは栗林良吏(りょうじ/トヨタ自動車)を1位指名。昨年の森下暢仁に続き、即戦力右腕の一本釣りに成功した。未来の主力選手を発掘、指名していく過程の中で、これまでカープはどのような戦略を立てドラフトに臨んできたのだろうか?

 ここでは直近10年間に絞り、カープのドラフト指名選手を当時の状況と共に振り返っていく。今回は後に投打の主力に成長した野村祐輔、菊池涼介の獲得に成功した2011年のドラフトを振り返る。

明治大時代は3試合連続完封勝利などで、同大5度目の優勝に貢献した野村祐輔投手。カープが即戦力右腕の一本釣りに成功した。

 東日本大震災の影響でシーズン開幕が延期となったものの、公式戦日程繰り下げの余波を受けることなく例年通りの時期に開催された2011年のドラフト会議。この年のドラフトで注目を集めたのは『大学ビッグ3』と称された野村祐輔(明治大)、菅野智之(東海大)、藤岡貴裕(東洋大)の動向だ。

 ドラフト会議当日は大方の予想通りに、12球団の半数が大学ビッグ3を指名。巨人の単独指名が有力視されていた菅野の交渉権を、急転直下で日本ハムが勝ち取るというドラマが生まれるなか、カープは即戦力右腕の呼び声が高かった明治大・野村祐輔の一本釣りに成功した。

野村祐輔投手

 野手陣の強化も重視していたカープは、2位で菊池涼介(中京学院大)を指名した。事前の注目度は決して高くはなかったが、2年春には岐阜学生リーグで三冠王、トータルではベストナインを5度獲得するなど、カープスカウト陣はその可能性を高く評価していた。

 2011年ドラフトでカープが指名した選手は通常ドラフトで4名、育成ドラフトは球団史上最多の4名と合計で8名。1位の野村をはじめ投手4名、野手は菊池を含めて4名と投手、野手バランスの良い指名となった。

菊池涼介選手

 球団からの期待に応えるように、ドラ1の野村は初年度から先発ローテーションに定着し、防御率1点台(規定投球回到達)の好成績を残して新人王を獲得。菊池は1年目、二軍では主にショートを守っていたが、当時一軍でセカンドのレギュラーを務めていた東出輝裕が故障離脱すると、一軍昇格を果たし、そのまま慣れないセカンドのポジションでルーキーイヤーを完走。2年目以降は球界屈指の守備力を武器にセカンドのレギュラーに完全に定着していく。

 2016年には、野村が最多勝利(16勝)、最高勝率(.842)のタイトルを獲得。菊池も最多安打(181本)、ゴールデン・グラブ賞に輝くなど、2011年のドラフト上位組が多大に貢献してリーグ優勝を達成。25年ぶりのリーグ優勝を成し遂げる上でも、この年のドラフトは大きな鍵を握っていたと言えるだろう。

【2011年 カープドラフト指名選手】
1位:野村祐輔(明治大・投手)
2位:菊池涼介(中京学院大・内野手)
3位:戸田隆矢(樟南高・投手)
4位:土生翔平(早稲田大・外野手)
育成ドラフト1位:富永一(徳島インディゴソックス・投手)
育成ドラフト2位:中村真崇(香川オリーブガイナーズ・外野手)
育成ドラフト3位:塚田晃平(早稲田大・投手)
育成ドラフト4位:三家和真(市和歌山高・外野手)