佐々岡カープ元年、主力選手が故障などで苦しむ姿が目立つ中で、多くの若手選手が躍動した。ここでは「初」をキーワードに2020年シーズンの佐々岡カープで生まれた記録を振り返っていく。

 今回はドラフト2位ルーキー・宇草孔基が一軍デビューを果たした10月6日の阪神戦(マツダスタジアム)を振り返る。

10月6日の阪神戦。ルーキーの宇草孔基が「1番・レフト」でスタメン出場。5回の第3打席でプロ初安打となる左中間二塁打を放った。

◆昇格即スタメン出場! 期待に応えプロ初安打もマーク!

 俊足巧打が持ち味のプロ1年目・宇草孔基。初の春季キャンプでは一軍スタートとなり、紅白戦では本塁打をマークするなど、才能の片鱗を見せつけた。荒削りながら、高い潜在能力を評価する声もあり、二軍では攻守にわたり安定した活躍を続けてきた。

 順調なルーキーイヤーを過ごしているようにも見えたが、宇草が見据えていたのは、あくまでも一軍の舞台。ドラフト1位で同級生の森下暢仁は一軍の先発ローテーションに定着。ドラフト2位で即戦力としての期待を背負い入団した宇草が、二軍で過ごす日々に納得するはずもなかった。

「早く一軍に上がるためにやるだけだと思っています。課題がたくさんある中で、『昨日はこうだったから今日はこうやってみよう』とか、そうやっていろいろ試せているのは良いことだと思います。とにかく一軍の舞台で勝負したいので、どんどんアピールをしていきます」

 一軍昇格前に、力強いコメントを残していた宇草。この頃、チームは、若手にチャンスを与える方向に舵をとり、数多くの若鯉が一軍にあがり、貴重な経験を積んでいた。

「年齢が近い選手の活躍は刺激になりますし、一軍の試合はいつも見ています。ただ焦ってもしょうがないと思いますし、気持ちをうまくコントロールして、課題と向き合いながら練習に取り組んでいきたいです」

 ライバルたちへの対抗心を胸に秘め、虎視眈々と一軍昇格の機会を伺っていた背番号38に、ようやくチャンスが巡ってきた。10月6日に一軍昇格が決定すると、その日の阪神戦で「1番・レフト」で出場。佐々岡監督は期待のルーキーを昇格即、スタメンで起用した。

 初回に迎えたプロ初打席、阪神先発・青柳晃洋の初球を叩くとセカンドゴロ。出塁はできなかったが、初球からバットを振り積極性を示した。2打席目は3回1死の場面。フルカウントから6球目を打ちにいくもサードゴロ。しかし、5回の3打席目で快音を残した。青柳との3度目の対決、この打席もフルカウントになるも、6球目をとらえると、左中間二塁打。プロ初出場を果たした試合で、うれしい初安打を放った。第4打席は四球。デビュー戦は3打数1安打1四球の結果を残し、待ち望んでいたプロのスタートを切った。

 宇草はこの試合以降、5試合連続で1番でスタメン出場。10月10日のヤクルト戦(マツダスタジアム)では、2点タイムリーを放ち、先発した同期の森下を援護。試合後には森下と共にお立ち台にあがり、ファンに喜びの声を届けた。

「まだまだ課題はたくさんあります。いろいろ自分の中で試行錯誤はしていますが、やっぱり大きなバッターになっていきたいと思っています。すべての面で力を伸ばしていきたいですね」

 カープ外野陣は、実力者たちが揃う激戦区。レギュラー奪取にはさらなるアピールが必要になってくる。同年代の活躍を刺激に変えながら、来季は今季以上の活躍を期待したい。