◆FWはヒーローになれるポジション

前所属クラブへの思いも語るなど、当時からチーム愛を口にしていた佐藤寿人。後にサンフレッチェがJ2に降格したときも即残留を表明した。

― 移籍を決意するに当たっては、色々と複雑な思いもあったのでは?

「悩みすぎたせいか、何を基準に答えを出せば良いのか分からなくなっていました。サッカー選手としては、当然上のレベルでプレーして、優勝争いをするのが一番です。でも一方で仙台を裏切れないという気持ちもありました。『仙台をJ1に戻す』と常に言葉に出していたので、裏切り者なんじゃないかなって。そうやって悩んでいたときに、『降格したとき移籍していく選手もいたけれど、その中で残ってJ1に上げるためにプレーして、個人的にしっかりとした数字も出したじゃないか。それでもう、十分責任は果たしただろう』と剛さんに言われたんです。その言葉で、色々なモヤモヤがすっきりした気がしました」

―  サンフレッチェに入る前のチームの印象はいかがでしたか?

「ポジションごとにレベルの高い選手が揃っているのですが、去年は勝ちきれない試合が多いなと感じていました。やはりFWが点を取れないことが一番の理由なんじゃないかな、とか。でもFWには良い選手もたくさんいたし、なんでかな? というのはありました」

―  寿人選手にとってのFWの魅力はどんなところですか?

「FWはヒーローになれるポジションです。点を取って勝てばお立ち台に上がれますからね。チームを勝利に導けばそれがうれしさに変わるし、結果を残せなければ当然自分に跳ね返る責任も大きくなるけど、それもFWならではの醍醐味だと思います」

―  責任感は強い方ですか?

「2003年にシーズンを通して試合に出ることができて、その頃から応援してくれる人たちのために良い結果を出したいと思うようになりました。FWだから得点チャンスの場面って今でも鮮明に頭に残っているんですよ。大事な場面で外したシュートは、これからもずっと忘れることはないんじゃないですかね。あの場面でこうしていれば、たぶん決まっていたなとか。そうすれば勝ち点1が3になったり、0が1になったりして、勝ち点差を考えると1つでも勝っていれば残留していたわけですから。そう考えると自分が情けなくなることもあったけど、それだけ責任を背負ってプレーできるのは、幸せなことだと思います」

― 寿人選手は『裏をとる動き』が特長だと、よく言われますが?

「『裏をとる動き』は小野監督が教えてくれたんです。僕がU-16の時、技術委員という形で試合を見てもらっていて、ボールを受けるときの視野の確保の仕方だとか、いろいろなことを教えて頂きました。剛さんは僕の原点とも言うべき人です。この動きは僕も得意としているし、持ち味であるスピードを活かすこともできます。僕がDFの背後をとる動きをしてボールを引き出すことができれば、一つの攻撃の形もできると思います。まだまだそういうことを要求し切れていないので、しっかり要求してカズたちにボールを出してもらいたいですね」

(広島アスリートマガジン2005年4月号掲載・表記、所属等は当時のまま)