◆野球に対する意識が変わったプロ2年目

 2年目の2003年はシーズン途中からスタメンで起用してもらえるようになりました。ただ、当時は実力でポジションを奪ったという感覚はなく、監督から出させてもらったという印象です。なので他チームのキャッチャーを見て、常に勉強しながら必死に食らいついていました。

 キャッチングに関して一番参考にしたのは中日の谷繁(元信)さんです。谷繁さんは投手がモーションに入っても、ミットを下に垂らさないんです。構えた状態を保つのは結構難しいのですが、谷繁さんは1試合を通じて、そういったキャッチングができる捕手です。僕は現役を引退するまで、ずっとそこを意識しながら練習していました。

 一軍の試合に出させてもらうようになってから、野球に対する意識が変わりました。とにかく試合に勝たないと意味がないのが一軍ですし、二軍から上がってきた投手は登板した試合の結果によって再び二軍降格、年齢によっては引退しなければいけなくなるかもしれません。

 そういった投手に対して失礼なことはできないので、しっかりと意図が分かるリードを意識するようになりました。大学時代は、本を読む機会は少なかったですが、野村(克也)さんが書かれた本を読んだり、配球についてもこれまで以上に深く考えるようになりました。

 またこのシーズンは阪神に移籍された金本さんと対戦できたことも大きかったです。金本さんは元カープだけに打たれたときは、観客席から『先輩だから遠慮しているのか』という声が聞こえてくることもありました。全くそんな気持ちはないのですが、ファンの方からは内角を攻めることができていないと見られていたようです。

 当然内角を要求していましたが、金本さんはカープの内情を知っているだけに、内角攻めの配球が読まれていたのでしょう。それだけに、金本さんをどう攻めるのかは常に課題であり、金本さんとの対戦を通して考えたことはその後のリードでも役立ちました。

 必死に食らいつき続けたプロ2年目は、116試合に出場し、プロ野球選手として、そして捕手として多くの経験をさせていただくシーズンとなりました。