2010年から5年間カープを率い、25年ぶりの優勝への礎を築いた野村謙二郎元監督。この特集では監督を退任した直後に出版された野村氏初の著書『変わるしかなかった』を順次掲載し、その苦闘の日々を改めて振り返る。
「変わるしかなかった。」のご購入は、広島アスリートマガジンオンラインショップ

 

 補強という意味で最大のイベントは、言うまでもなくドラフトである。ドラフトが重要なのは、ここが未来のチームをどうつくっていくか問われる場所になることだ。カープの場合、まず現有戦力の年齢とポジションを記載した資料がある。それを見ながら数年先のチームを構想していく。

 現在は22~25歳の選手層が厚くなってきた。その一方で25~30歳あたりの層は薄い。現在22~25歳の層が試合をこなして25~28歳の年齢になる頃には、彼らも選手として脂が乗り、チーム力も上昇していると考えられる。と同時に次の世代を担っていく新たなる22~25歳の層もつくっていかなければならない―そういうことを考えながら僕らは会議に臨むのだ。

 僕が監督に就任した2010年から1位指名で獲得した選手を挙げてみると、(今村)猛、福井(優也)、(野村)祐輔、髙橋(大樹)、(大瀬良)大地……毎年評価の高い選手を獲れている。僕はドラフトは1位の目玉選手が獲れれば7割以上は成功だと思っている。その他の選手は、プロに入って化けてくれればうれしいという感覚。焦らずゆっくり芽が出てくるのを待ちたいという考え方だ。

 このラインナップを見ればわかる通り、上位で指名してきたのはほぼピッチャーである。特に2011年以降は、福井、祐輔、大地に九里(亜蓮)と即戦力が中心になる。何度も書くが、やはり野球はまずピッチャー。良いピッチャーが揃えばチーム成績も上昇していくということは近年のカープが身をもって証明しているだろう。

 ドラフト上位で有力選手が入ってくると、単純に戦力の上積みということに加えて、チーム内で新たに競争が発生するという利点がある。前年、あと一歩でローテーションに手がかかりそうだったピッチャーが、新人が入ることによって再び序列の後ろへと押し出される。それは野手も同じで、優れたプレイヤーが入団するとみんな「ここから最初に外されるのは誰だ?」と素早く計算する。