2016年には選手会長として25年ぶりの優勝に突き進むチームを牽引。カープで13年間プレーした、かつてのリーダーがコーチとして帰ってきた。戦力外通告から独立リーグを経てパ・リーグに移籍。そして昨年現役を引退。栄光も挫折も知る小窪哲也コーチが胸に宿す選手育成論に迫った。(全3回のうち3回目・取材は2022年3月上旬)

選手の自主性を育む指導を意識する小窪哲也一軍内野守備・走塁コーチ

◆會澤は今のチームで一番影響力のある選手

─2016年は選手会長としてチームを牽引されました。リーダーとしてどんなことを心がけていましたか?

「そうですね……。一人の力だけではチームをまとめることはできないと思っていたので、野手であれば田中(広輔)や菊池(涼介)、丸(佳浩・現巨人)や會澤(翼)、投手であれば大瀬良(大地)や中﨑(翔太)らとしっかりとコミュニケーションをとることを心がけていました」

─名前のあがった選手は当時主力としてチームを引っ張っていた選手です。

「若い選手の見本になってくれる選手たちと連携を取ることを意識していました。そういう選手たちが先頭に立つことで、他の選手たちもまとまってくれるのではないかという思いがありました」

─今年から選手会長、投打のキャプテンには新しい選手が就任するなど、世代交代の動きが見てとれます。そういう意味では、2018年に小窪コーチから選手会長を受け継ぎ、先ほども名前のあがったプロ16年目の會澤選手が果たす役割は大きいように思います。

「會澤は今のチームで一番影響力のある選手だと思っています。會澤とはオフの間に話をしましたが、彼にはチームをピリッと引き締める役割を期待したいですね。2016年は黒田(博樹)さんや新井(貴浩)さんがチームを俯瞰し、牽引してくれていましたが、會澤もそういう存在にならなければいけません。シーズン中はチームの先頭に立ち、負けが続き、暗い雰囲気になった時には積極的に声を出すなど、チームが良くなるための動きを期待しています。実際、春季キャンプではそういった姿を見せてくれていましたから、ペナントレースが始まっても続けていってほしいと思っています」

─チームが一つになるために、他に期待している選手はいますか?

「菊池です。會澤同様に、プレーの面でもリーダーシップの面でも、チームを牽引する存在になるべき選手だと思っています。春季キャンプでは若い選手を指導する場面がよく見られましたが、気が付いたことを積極的に伝えてくれていたので非常に心強かったです」

─4年ぶりの優勝に向けて、コーチとしてどう貢献していきたいですか?

「選手と一緒に戦いたいと思っています。良いプレーが出れば一緒に喜び、逆に失敗やミスがあれば一緒に反省する。そんな存在でありたいですね。年齢的にもより近い位置で選手をサポートできると思うので、選手が困っていたらヒントを与えられるように、僕自身も成長していかなければならないと思っています」

◆小窪哲也(こくぼ・てつや)
1985年4月12日生、奈良県出身。2007年大学生・社会人ドラフト3巡目でカープに入団。1年目から主力として一軍で活躍し98試合に出場。2016年には選手会長として25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。2021年は他球団でのプレーを経験し、昨年限りで現役引退。2022年から一軍内野守備・走塁コーチに就任。