オリックス・ブルーウェーブ(現オリックス・バファローズ)、MLBワシントン・ナショナルズのトレーナーを務め、メジャー時代は「マック(高島の愛称)はゴッドハンドを持っている」と高い評価を得たトレーナー・高島誠。この連載では、数々のプロ野球選手を指導してきた経験をもとに、これまで公では語られることのなかった、マック流・野球パフォーマンスアップの秘密を披露していく。

2011年、キャンプなしで行われたNFLの悲劇

野球専門のトレーニングジム「Mac’s Trainer Room」代表の高島誠です。『Mac高島の超野球塾』の連載をご覧いただき、ありがとうございます。

まずはプロ野球の開幕が6月19日に決まりました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、プロスポーツを目にする機会がありませんでしたが、スポーツには人の心を動かす力があります。プロ野球開幕をきっかけに、少しずつ日常に活気が戻ってほしいところです。

ただ、トレーナーとして気がかりなのは選手のコンディションです。準備不足によるケガで思い出すのは2011年のNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のことです。シーズン前に、オーナーと選手会の間に揉め事が起こったため、キャンプをできずシーズンに突入。1シーズン戦うための体づくりを行うキャンプができなかった影響からか、アキレス腱をケガする選手が相当多かったようです。

今回のプロ野球も、春季キャンプを行っているとはいえ、その後、約1カ月半近く、実戦形式の練習ができていないため、2011年のNFLと同じような状態に陥らないことを願うばかりです。

12球団を見渡すと、球団のトレーニング施設が使えなかった選手もいるため、春季キャンプに行く前と同じような体の状態に戻ってしまった選手もいるのではないでしょうか。特に投手は、急ピッチでの調整による肩や肘のケガが心配なところです。

過去にプロ野球球団でトレーナーをさせてもらった経験からいうと、選手のことを考えれば、本格的な練習再開から、約2カ月は調整期間としてほしいところです。

ただ開幕は決まっています。それだけに、気持ちの割り切りも必要になってきます。「仮にシーズン序盤で調子が悪くても仕方ないと割り切る、焦らない」「体ができるまで悪いなりになんとかしよう」という気持ちが大事になってくるのではないでしょうか。

では今回のコラムの本題です。

これまでこのコラムで何度もその重要性を伝えてきた「柔軟性」。今回は、基本となる股割りと腰割りを例に、柔軟性が野球のプレーにもたらす影響について紹介したいと思います。

野球の技術を上達させるためにも、ケガのリスクを減らすためにも、柔軟性は非常に大切なポイントとなります。