交流戦1週目を終え、ロッテに1勝2敗、ソフトバンクに0勝3敗と低調な発進になってしまったカープ。0対7で敗れたロッテとの初戦、印象的なシーンがあった。
初回、ロッテは1番・髙部瑛斗がヒットで出塁すると、2度の牽制を潜り抜け、二盗に成功。2番・中村奨吾のセカンドゴロで1死三塁のチャンスを作ると、3番・マーティンの犠牲フライで1点を先制した。
対する広島も1番・野間峻祥がヒットで出塁。2度の牽制のあと、2番・菊池涼介がバントで走者を進め、1死二塁。3番・西川龍馬のファーストゴロで2死三塁のチャンスを作ったが、4番・マクブルームが見逃し三振に倒れ、反撃の機会を失った。
局所的ではあるが、盗塁の有無で明暗が分かれたシーンだった。
◎優勝した年の盗塁数はいずれもリーグ1位か2位
5月30日終了時点で52試合を消化し、カープのチーム盗塁数は9個。12球団で最下位だ。
これまでのプロ野球史において、カープの伝統は機動力野球だった。1975年、1979~80年、1986年、1991年、2016~18年、7度のリーグ優勝のシーズンはすべてチーム盗塁数がリーグ1位か2位。盗塁を絡めた攻撃で勝利をつかんできたのだ。
特に2016~18年は走りまくっての3連覇。2019年からは3年連続でBクラスに低迷中だが、チーム盗塁数はリーグ4位→4位→3位で推移している。
◎盗塁数減少は決してマイナスではない
ただし、盗塁はなくとも得点力が好調であることに間違いはない。5月30日終了時点でチーム打率.256、452安打はリーグトップ。211得点もトップの巨人と僅差の2位だ。
とりわけ、52犠打は断トツのリーグトップであり、「つなぎの野球」は機能している。走塁面も積極性が著しく劣っているわけではない。これはカープの攻撃志向の変化と見るべきだろう。
盗塁は打席にいるバッターに制約を与える。今のカープ打線は打力にフォーカスできる戦力がそろっているのだ。そのためには、相手バッテリーにどうプレッシャーをかけていくかがテーマ。これまでチーム本塁打数はリーグ最下位の24本。それでも広島打線に弱さを感じないのは、やはり「つなぎの野球」の成果といえるはずだ。
それでも一抹の不安が残るのは、これまでの広島の伝統が盗塁を絡めた攻撃でバッテリーを揺さぶるタイプの「機動力野球」だったからだろう。「打力信頼」の路線でリーグ優勝を果たしたとき、広島の機動力野球の形は新たなフェーズに突入する。今シーズン、打ち勝つ野球は成就するか!?