2005年から12年間をサンフレッチェで過ごし、数々のゴールとタイトル、あふれるクラブ愛でいまも多くの人々に愛されている佐藤寿人氏。共に紫のユニホームを着たチームメイトがピッチ上で見せた才能、意外な素顔などを連載『エースの証言』で振り返っていく。

サンフレッチェに2010年〜2013年に在籍した西川周作

【西川周作・後編】現在は浦和でキャプテン。トロフィーを掲げてほしい

前編から続く)その2013年限りで周ちゃんはサンフレッチェを離れ、浦和レッズに移籍します。何度も話をしたし、本人がすごく悩んでいる姿も間近で見ていました。当時は日本代表でも正GKを狙える位置にいて、翌年にブラジルW杯が控えていたこともあり、いろいろなことを考えていたんだと思います。

 最終的に浦和に行くことを伝えられたときは、やっぱりショックでした。この先もずっと一緒に戦えると思っていましたから。当時小学生だった次男が周ちゃんのことを大好きだったので、僕の家族に伝えるときも、つらかったです。広島を離れる前に両家族で食事をしたとき、次男は周ちゃんの似顔絵とメッセージを描いた手紙を渡していました。

 実は今朝(打合せ日)、周ちゃんからLINEが来たんです。このときの次男の手紙が「片付けをしていたら出てきました」と。僕が周ちゃんのことを話そうという日に、すごい偶然ですよね(笑)。高校1年生になった次男は、周ちゃんの影響を受けてGKでプレーしているんですよ。

 再び対戦相手になった周ちゃんは、すごく嫌な選手でした。ゴールを決めるのも難しいですけど、最も嫌だったのは、足でプレーしているときにプレッシャーをかけても、簡単に味方にパスをつなぐので奪えないこと。チームメートだったときに相手のFWを見て「うわー、つらいだろうな」と思っていたことを、今度は自分がやらなければいけない。奪えないだろうと思っているのにプレッシャーをかけるのは、本当に疲れました。

 浦和では現在、キャプテンを務めています。来年2月にACL(アジアチャンピオンズリーグ)の決勝を控えていて、優勝すれば最初にトロフィーを掲げるわけですから、ぜひ実現してほしいです。サンフレッチェのファン・サポーターの皆さんも喜んでくれるのではないでしょうか。国内の大会ではライバルになるので難しいでしょうけど、日本のクラブを代表して戦っているACLですからね。

 僕にとって周ちゃんは、いろいろな意味でホッとさせてくれる存在です。安心感があるんですよ。あの笑顔で、僕以外のたくさんの人にも安心感を与えているはずです。36歳になりましたが、まだまだ第一線で頑張ってほしいですし、1年でも長くトップレベルのパフォーマンスを見せてくれることを期待します!

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◆西川周作(にしかわ しゅうさく)
1986年6月18日生、大分県出身 ポジション・GK サンフレッチェ広島/2010年〜2013年 大分トリニータU−18から2005年にトップチームに昇格し、1年目から正GKとして活躍。2010年にサンフレッチェに完全移籍し、同じく正GKとして2012年のJ1初優勝、翌2013年の連覇に貢献した。2014年に浦和レッズに完全移籍し、現在も浦和の守護神として活躍を続けている。

◆佐藤寿人(さとう ひさと)
1982年3月12日生、埼玉県出身。2005年にサンフレッチェに移籍。3度のリーグ優勝に貢献し2012年にはMVPと得点王を獲得。2020年限りで現役引退。通算のJ1得点数は歴代2位。引退後は指導者・解説者として活動中。