チャンピオンシップ初出場を決めた2022-23シーズン。創設からわずか9シーズン、あと少しで頂点に手が届くところまで昇り詰めた。これだけの短期間で強くなり、数々の記録を残してきた広島ドラゴンフライズを経営する広島ドラゴンフライズ取締役社長・浦 伸嘉。彼の思い描く広島らしさ溢れるチームづくりとは!?
◆広島にチームがあることは、非常に大きなアドバンテージ
—近年、急激な盛り上がりを見せるBリーグでは、これから選手の争奪戦といったことも予想されます。
「バスケットボールは、世界へ目を向けると競技人口が断トツでナンバー1のスポーツです。テレビの視聴率もNBAの試合は世界一。グーグルをはじめとする世界のトップ企業がNBAに投資をし、世界300以上の国や地域に試合中継が配信されているようなスポーツです。日本のバスケットボール界が急にそんな状況にはならないでしょうが、とても大きな可能性を持った世界が、広島にもあるということは、非常に大きなチャンスです。
そこに気づいている人は、まだ日本では少ないのですが、近年、一流企業がスポンサーとして各チームをサポートする動きが出てきました。ですから、選手の争奪戦といったことはこれから激しくなっていく可能性が十分に考えられます」
—その争奪戦に広島ドラゴンフライズも参戦していくと?
「私の中にいくつか哲学があるのですが、広島にはプロスポーツが育つ土壌と、すごく強力な地の利があると考えています。世界のトップが集うG7を広島で開催できた一番の理由は、世界の誰もが知っている日本で一番有名な都市であり、世界へ平和を発信していく力のある場所だからです。今後、Bリーグがアジアや世界を視野に入れるほど大きくなってくると、広島の土壌と地の利は、大きなアドバンテージを持つはずです。
たとえばNBAを引退しかける選手に、『現役最後の年を、世界中から注目を集める平和都市広島でプレーしませんか』と声をかけると、その選手はきっといい反応を示してくれるでしょう。そういった広島の魅力を最大限に伝えることで、マネーゲームとはまた違った方法で、選手に来てもらえると信じています」
—来年10月には、B1リーグ構造改革『未来構想』においての、2026‐27シーズンの参戦審査が行われますね。
「2026年からリーグが新しく生まれ変わるための審査なのですが、2023‐24シーズンが審査対象の最終シーズンです。この1年でホームアリーナのこと、集客や売り上げのこと、地域とどれだけ一体になって、バスケットボールに取り組んでいるかといったことを審査されます。
10年目の節目でもありますし、2026年からのライセンスを取得できるか、私たちの命運がかかっている1年になります。新しく生まれ変わるB1リーグに1年目から参戦できないとなれば、良い選手も来てくれなくなりますし、応援してくださる広島の方々にも頭が上がりません。そういう意味でも、チームの歴史の中で最も重要な年になります。
経営視点からは『勝ち負けに左右されない経営』と言ってはいますが、やはり勝利で広島のみなさんの関心を引きたいというのが本心です。これまでよりも一層、勝ちにこだわっていく1年にしていきます」
—勝負の一年を迎えるにあたって、ブースターのみなさんへ一言お願いします。
「スポーツクラブという存在は誰のものでもなく、地域、日本の共通の財産です。広島県の全員の財産ですね。そういったことに対する自覚と責任感を持って、チームを運営したいと思います。
勝ってうれし泣き、負けて悔し涙、文句は言うけど本当に応援したくなる、みなさんが大好きなカープのような、多くの人から愛されるチームを目指して頑張っていきます。我々の活動は、全てにおいてブースターのために行っていますので、ぜひ一緒にクラブを盛り上げ、成長させていただきたいと思っています。
来年は大きな勝負の年でもありますし、ぜひみなさんの力をたくさん貸してください。ありがとうございます!」
⚫️浦 伸嘉(うら・のぶよし)/1980年10月1日生、広島県出身。美鈴が丘高-大阪商大-新潟アルビレックスBB-A2(2003-04)-新潟アルビレックスBB(2005-06)- 福岡BBボーイズ(2006-07)。2004年に広島県代表として国体選手に出場し、翌年のbjリーグ開幕とともに新潟アルビレックスBBへ昇格。PG(ポイントガード)として新潟、福岡などで活躍した。2007年に引退し、2016年から広島ドラゴンフライズの社長を務めている。