苦手といわれる交流戦を9勝9敗の五分で終えたカープ。後半戦に入ってからは今シーズン初、4年ぶりとなる9連勝を飾り、首位・阪神にも急接近。ファンの期待も大いに膨らんでいる。

 ここではOB・大野豊氏が、新井カープを独自の『視点』で解説。今季好調の要因を、野手陣から紐解いていく(数字は全て7月12日時点)。

7月6日の阪神戦では6回を投げて無四死球、無失点。今シーズン初勝利を手にした野村祐輔。

◆右の九里、左の床田。野村に、救援の二人にも注目

 先発投手陣では、床田寛樹と九里亜蓮がそれぞれ防御率1点台、2点台をキープしており、内容としても非常に良い投球をしてくれているといえるでしょう。床田は昨シーズン8月の骨折を感じさせない投球ができていますし、九里も、最近は自分のイメージ通りの投球ができるようになってきたのではないかと感じます。
 九里はもともと体の強い選手ですから、体調不良や故障のないように、1年を通してローテーションを守り、結果を残してほしいと思います。カードの初戦は非常に大切ですから、九里と床田の二人が初戦でしっかり勝って、後に続く投手たちに良い流れをつないでもらいたいですね。

 今シーズン先発陣最年長となった野村祐輔は、ここ数年なかなか思うような投球ができていませんでした。それだけに6月29日の先発登板には、本人もいろいろな思いがあったことでしょう。そんななかでもしっかりと野村自身の持ち味を発揮して、6回無失点に抑えてくれました。
 新井監督もコメントしていましたが、まさに100点満点の投球だったと思います。残念ながら勝ちはつきませんでしたが、後半戦での活躍が期待できる内容でした。このまま良いアピールを続けていってもらいたいですね。

 救援陣の注目は、やはりターリーと島内颯太郎です。この二人には新井監督も信頼を寄せているはずですから、あとは栗林良吏がどこまで状態を上げてくるかで救援陣の起用方法により幅が生まれると考えられます。幸いにも今シーズンは矢崎拓也が好調で、ストッパーとして4勝0敗14セーブと良い数字を残しています。
 栗林になかなか本調子が戻ってこない今、栗林をセットアッパー的に起用して、矢崎につなぐという形が、もうしばらくは続くのではないでしょうか。いずれにせよ、先発陣は少しでも長いイニングを投げて救援陣を温存し、勝ちパターンの投手を休ませることができる試合を増やしていかなければならないでしょう。

 以前もお話しした通り、野球というのは点取りゲームです。1点を取ることができれば、2点取られない限りは負けることはありません。しかし1点を取られてしまうと、2点取り返さなければ負けてしまいます。2失点、3失点……と重なっていくほどに、どんどん逆転が難しくなってしまいます。
 投手、野手それぞれの選手が、自分のポジションや立場、役割をしっかりと把握しながら、粘り強く投げ、粘り強く打って、1点の攻防の場面で、勝つ確率を上げるようなプレーに期待をしたいと思います。

 
広島アスリートマガジン8月号は、「追悼特別特集 北別府 学 ありがとう 20世紀最後の200勝投手」カープが誇る大エース北別府学氏が残した偉業の数々を振り返りながら、強いカープを共につくりあげた仲間たちが語るその姿をお届けします。