4月5日、ルートインBCリーグが開幕する。山下徳人新監督率いる栃木ゴールデンブレーブスは、敵地、茨城アストロプラネッツとの開幕戦を迎える。NPBも熱視線を送る新戦力と、経験豊富なベテランの融合でリーグの台風の目となるのか。ここでは山下監督に選手に託す思いや、注目の開幕投手について聞いた。

山下新監督が開幕投手に名を挙げた、栃木ゴールデンブレーブスの吉川光夫投手

―4月5日にルートインBCリーグが開幕しますが、今のチームの状態はいかがですか?

「新加入の楠本龍聖遊撃手が、死球を受けて右手首を骨折し、GW明けの復帰を目指しています。レギュラーとして考えていたので痛手となってしまいました。それでもチーム全体の雰囲気としては良い状態です」

―オープン戦では、新人選手を多く出場させていました。

「多くのポジションで新加入選手が出場し、固定できたのは田代優翔と小倉由靖、菅野秀斗の3名だけでした。野手では5つ6つのポジションを競いあってもらいたいですし、投手も新加入の清水敬太や栗原健多を先発で起用していますが、彼らにはぜひ頑張ってもらいたいと考えています。とても楽しみにしています」

―2月時点では、『社会人野球のエイジェックから移籍してきた選手に期待している』とコメントされていました。その選手たちがチームに与える影響はなんでしょうか。

「彼らは完全に主力選手として考えているので、楠本の骨折は非常に痛い状況です。それに加え、清水も捻挫してしまいましたが、栗原や鈴木智也は開幕から頑張ってくれそうなので、その点には期待しています」

―そのほかの新人選手も主力として出場している印象です。

「その通りです。特に三方陽登、田端真陽ダッタ(登録名・ダッタ)、遠藤桃次郎(登録名・桃次郎)はオープン戦の終盤でかなりの戦力になりそうな印象を受けました。野手ではこの3人の新人選手が楽しみです。投手では、アルベスリュウはブラジル代表合宿の影響で合流が遅かったため、オープン戦でもまだ3イニングほどしか投げられていません。潜在能力は非常に高いと思っていますが、まだ彼の実力を完全に把握できておらず、もう少し見極めたいとも考えています」

―NPB入りを目指す選手たちも多いと思いますが、その中でも注目選手は?

「三方、ダッタ、田代、吉田健吾、楠本、鈴木、桃次郎の野手7人です。3月の時点で既に多くの球団のスカウトが視察に来ているので、選手たちにとって励みになり、チームの士気向上にもつながると感じています。また、社会人野球のエイジェックから移籍してきた楠本や鈴木は『ラストチャンス』という思いで挑んでいます。昨年は社会人チームでほとんど出場機会がなかったので、本当に飢えている状態ですね。ポテンシャルは十分にある選手たちです」

―捕手の田代選手は昨季まで出場機会は少ない印象ですが、現時点ではレギュラーとして起用されています。どんな成長があったのでしょうか?

「昨年の6月頃から急成長し始め、7月には結果が出始めました。その後はほとんどレギュラーとして出場しています。彼の努力の成果もあり、打撃面、送球面、そして守備全般、リードも含めてすべてが向上しました。今では安心感のあるキャッチングやスローイングを見せてくれています。ですがもう一人、吉田という新人も加入しました。捕手争いは良い競争になると思います。吉田の方が強肩で長打力もあるので、パーツごとには優れたところを見せていますが、今のところ総合力では田代の方が上です。吉田に関しては一塁も守れるので、DHも含めた形で起用していきたいです」

山下監督が期待を寄せる、田代優翔捕手

―昨年主力だった竹本徹投手はいかがですか?

「もちろん期待しています。今年はリリーフとして起用し、8回を竹本、9回を堀越歩夢のダブルストッパー体制で試合を締める予定です。短いイニングの登板になることで、昨年よりも球速がアップすると思いますし、スカウトへのアピールにもつながるでしょう。また先発陣は清水、栗原、中村拓馬に加えて、吉川光夫と成瀬善久が谷間を埋めながら、基本的には5人で回す予定です。さらに今後トライしたいのがマロスティカです。長いイニングを投げさせながら調整し、故障者が出た際のバックアップとしても考えています。シーズン全体を見据えて、彼の先発起用も視野に入れています」

―オープン戦でのファンみなさんの熱い声援はどう感じましたか?

「本当にありがたいですね。まさに地域の中で応援してくださっているという、すごく濃い感じがします。NPBではファンとの距離感が遠いと感じることが多いですが、栃木では距離感が近く、すごく熱い応援を感じます」

―今季のリーグの大きな変更点として、二地区制に分かれましたが、その影響についてどのように考えていますか?

「相手チームによって戦略は変わってきますが、特に昨年は信濃戦と埼玉戦の成績が良くなかったので、(リベンジをする意味でも)同じ地区で戦えなくなったのは個人的に残念です」

―監督として初めて迎える新シーズン、チームを率いる上で大切にしていることはなんでしょうか?

「これは私も学生時代から指導されてきたことですが、『野球選手である前に、一社会人であれ』という考えを大事にしています。日々のミーティングで少しずつ伝えていますが、野球だけが人生ではありません。ただし、野球がうまくなるためにも、そういった姿勢が大切だと思っています」

―そんなシーズンがまもなく始まりますが、開幕戦の見どころを教えてください。

「開幕投手は吉川でいきます。ここが一番の見どころですね。実は年明けの時点で『いけます』と本人も言ってくれていました。さらに早めに仕上がりもできていましたし、清水のケガもあり、最終的には『吉川しかいない』ということで指名しました。川﨑宗則もDHとして出場する予定です。ちなみに4月6日のホーム開幕は中村です。昨季、地元の宇都宮で悔しい思いをしましたから、リベンジで燃えています。先日の登板でも良いピッチングを見せてくれました。開幕戦は吉川、6日は中村に決めました」

―最後に、今季の目標を教えて下さい。

「やはり、日本一です。それとNPB入りを目指す選手をしっかりとサポートしていきたい。その両方を全面に押し出していきたいですね」

栃木ゴールデンブレーブス・山下徳人新監督

◆山下徳人(やました・のりひと)
1965年10月11日生まれ 和歌山県出身
球歴:箕島高ー東洋大ーロッテオリオンズ/千葉ロッテマリーンズ(1988~1998)
指導歴:ロッテ(1999-2003,2014-2017)ー栃木ゴールデンブレーブス監督(2025〜)