1993年の創刊以来、カープ、サンフレッチェを中心に「広島のアスリートたちの今」を伝えてきた『広島アスリートマガジン』は、2025年12月をもって休刊いたします。32年間の歴史を改めて振り返るべく、バックナンバーの中から、編集部が選ぶ“今、改めて読みたい”記事をセレクト。時代を超えて響く言葉や視点をお届けします。

 第4回目の特集は、カープ歴代助っ人外国人のインタビューセレクション。

 海を渡ってカープやってきた助っ人たちは、その活躍だけでなく、ユニークなキャラクターでも多くのカープファンに愛された。ここでは懐かしい外国人選手を中心に、彼らの “広島愛”を改めて振り返る。

 2011年にカープ投手陣に加わったデニス・サファテは、一時はリーグトップとなる22セーブを挙げるなど、ブルペンの柱として活躍した。7月にはカープの外国人投手球団最多記録を塗り替える25セーブ目を挙げ、守護神として君臨。2011年当時、カープ加入から3カ月後のサファテが、日本野球への印象、そして自身が『武器』とする速球を語ったインタビューを振り返る。(全2回/第1回)

(『広島アスリートマガジン2011年5月号』掲載記事を再編集)

広島在籍の2シーズンで104試合に登板。のちに移籍したホークスでは2017年の日本一に貢献した

◆投手野手関係なく、困っている若手は助けたい

— シーズンが開幕し、広島に来てから3カ月が経とうとしています。改めてカープというチームはいかがですか?

「日本に来てから楽しんで野球ができていますし、生活もできています。お互いを尊敬し合う良いチームメイトに恵まれたと思っています。性格上、チームメイトを笑わせてリラックスさせることも自分の役割かなと思っているので、できる限りそういうことをやっていきたいですね」

— すでにチームメイトからも『サファテ投手が良いムードメーカーになっている』という言葉も聞きます。

「そういうことを聞くとうれしいですね。チームの一員になれたのかなとすごく感じます。日本に来る前に日本でプレーしたことのある選手や日本人選手に話を聞いて、『いち早くチームメイトに慣れるのが鍵になる』と言われました。チームメイトに対して『何だ、お前は』というような見方をするとマイナスという助言をもらっていましたが、もともと自分はそのような人間じゃないですからね。真面目にやるときは真面目にやって、遊ぶときは遊ぶ。そういったメリハリをつけるタイプなので、移動中の電車や新幹線でもリラックスするときはリラックスしますが、試合が始まればビジネスとしてしっかりやっていくことが自分たちに任された仕事なので、しっかりやっていきたい」

— 生活する広島の街はいかがですか?

「球場まで歩いて来るときも良い街だなと感じていますし、どこに行っても人が温かいですね。日本に来て文化や言葉の違いがいろいろありますけど、そのひとつひとつを楽しんでいます」

— 文化や食事にも馴染めていますか?

「ニクタマソバ(広島風お好み焼きの定番メニュー『肉玉そば』)、好きです。他にも寿司も食べますし、ラーメンも好きですよ。食べてみないと好きか嫌いか分からないというのが僕のスタンスなので、挑戦してみないと。今まで食事をしてきて無理だなと思ったものはありません。私が完全禁煙の環境が整ったアリゾナ州から来ているからそう思うのでしょうが、レストランなど行くところどころで煙草の煙があるのは嫌ですね」

—ご家族に会えないのはすごく寂しいのではないですか?

「そうですね、ひとりで食事をすることもあるので、そういうことが無くなれば、球場から離れた生活ももっと楽しくなるのかなと思います。もっと地に足をつけたような生活ができるでしょうね。奥さんと娘2人が来日したらさらにまた楽しいいろんな経験を家族でできるなと思っています」

— ご家族の来日予定はあるのでしょうか?

「もう出生届けを出してパスポートの申請をしているので、遅くても5月中には来日できるんじゃないかと思います」

— サファテ投手にとっては心強い援軍となりますね。

「娘たちはまだチビなんですけど、彼女もきっと日本に住むことをすごく気に入ってくれると思います。路面電車を見ると、1日中乗せてくれと言うんじゃないと思います(笑)。それくらい街も文化も好きになってくれるんじゃないかと思いますし、彼女たちにとっても素晴らしい経験になるでしょうね」

— サファテ投手自身の武器は何でしょう?

「サムライソード(日本刀)です(笑)。それは冗談として、ファストボール(速球)だと思っています。ただ、ファストボールというのは少しでも甘くなると、打者にとっては打ちやすい球になります。開幕までいい形で投げられているのは、しっかりと制球ができていたから。右打者にも左打者にもきっちりインコースアウトコースに投げ分けられているので、そういう部分では良い春を迎えていると思いますし今まで順調に来ていると思います」

— サファテ投手の特徴として、『下から這い上がるような球筋』が特徴といわれます。

「投手としてここまでやってきたんですけど、幸運にもこのような球が投げられるようになりました。同じ150キロ近い球でも最後の1メートルくらいから打者に向かって伸びてくる球の方が打ちにくいはずなので、キャッチボールでも思い球を投げようと意識しています」

(後編へ続く)