2014年シーズン後半戦。当時プロ2年目の鈴木誠也は野村謙二郎監督に積極起用されて後半戦から一軍に定着。36試合に出場し、クライマックス・シリーズ(以下CS)ではスタメンも経験した。そしてオフには野村監督が退任し、新たに緒方孝市監督が就任。チームが変化していく中で鈴木は外野へコンバートされ、選手としての転機を迎えることになる。プロ3年目を迎えた2015年春季キャンプでのインタビューでは、一軍定着へ邁進する鈴木の思いが滲み出ていた。

2015年の春季キャンプでの一コマ。この年、鈴木選手は前年の36試合を大幅に上回る97試合に出場した。

 プロ2年目、二十歳の鈴木誠也は夏場以降に一軍での出場機会を増やした。9月にはプロ初本塁打、猛打賞もマークするなど、周囲の想像を上回るスピードで成長。さらにクライマックス・シリーズにもスタメン出場を果たすなど、2年間のプロ生活を経て、鈴木自身も自らの成長を感じるようになっていた。

「自信というよりは『何とかやっていけるかも』という気持ちが強かったですね。良い投手から打てることもありましたし、真っすぐのタイミングで変化球に対応することもできました。あと一軍の投手の球威に負けることなくバットを振れるという自信がつきました」

 もちろん全てに満足してはいない。阪神とのCSファーストステージ第2戦では7番・ライトでスタメン出場を果たした。しかし、両チーム無得点で迎えた7回表、1死満塁で打席を迎えた鈴木はサードゴロに倒れる。結果的に試合はスコアレスドローとなりCSは敗退。自らの併殺打でこの日最大の得点チャンスを逃したシーンは、その後もなかなか脳裏から離れなかった。

「後半、一軍で試合に出ることができましたが、今までの野球人生で一番悔しいシーズンでした。特に阪神とのCS第2戦の満塁の場面は、本当に今でも悔しくて忘れられません……。冷静に考えれば1死満塁の場面なので、外野フライを打てば良いという気持ちでいけると思うのですが、“打ちたい”という意識が強過ぎて、気持ちと実力が一致していませんでした。悔しい経験でしたが、プロ2年目であの場面を体験できたのは貴重ですし、起用していただいた野村前監督に感謝しています」

 2014年シーズン後半の8月、野村前監督から「球との距離をしっかり取って思い切りバットをぶつけろ」というアドバイスをもらってから打撃成績が上向き始めた。そして守備では内野ではなく外野での出場機会が増加。CSでは結果を残すことができなかったが、後に野村前監督はその打席を「『誠也は絶対にカープを背負っていく選手になっていくはず。そのためにこの打席は誠也の今後にとって、とても重要になってくる』そういう確信めいた予感があった」と振り返っている。

 当時から鈴木はその潜在能力の高さから期待をかけられていた。そして鈴木は野村前監督の期待に応えるべく、CSでの悔しさを糧にさらなる進化を目指していった。