組織論・戦略論 などの視点から、近年のカープの強さ・魅力の秘密を紐解いていく、広島アスリートマガジンwebでしか体感できない講義・『カープ戦略解析室』。案内人は、高校野球の指導者を20年務め、現在は城西大経営学部准教授として教鞭をとるなど多彩な肩書きを持つ高柿健。これまで13回にわたりお届けしてきた連載も今回が最終回。14回目は、「カープの勝ち(価値)の原理」について考えていく。

 

 カープの70年の戦略史を現代のカープに重ねたタイムトラベルも今回が最終回。約半年間お付き合いいただき誠にありがとうございました。添乗員として解析の至らなかった内容もあったと思いますが、今後の研究課題としてご容赦いただければと思います。

◆ライバルの躍進

 「授人以魚 不如授人以漁」

 人は魚を与えれば1日で食べてしまうが、釣りを教えれば一生食べていけるという老子の格言だ。

 2020年10月30日、2020年という特別なシーズンにおけるセ·リーグのペナントレースを制したのは巨人だった。カープのペナントの奪還、日本一の奪取は2021年の目標となった。

 巨人は今秋のドラフトで19名(育成12名)という史上最多の選手を指名した。「発掘と育成」に向けて3軍制を充実させることで、中期育成計画のもとドラフト上位指名レベルの選手を内製化していく戦略なのだろう。

 さらに原辰徳監督は若手を積極的に起用して競争の原理を働かせている。つまり、ストック型チームにフロー型チームの強みである「流れ」や「循環」による勢いをチームに織り込んでいるのだ。巨人の強さは“魚の釣り方”までも学びつつあるということだろう。

 カープは自身3連覇の結果として、こうした他チームの進化は覚悟しなければならない。