組織論・戦略論 などの視点から、近年のカープの強さ・魅力の秘密を紐解いていく、広島アスリートマガジンwebでしか体感できない講義・『カープ戦略解析室』。案内人は、高校野球の指導者を20年務め、現在は城西大経営学部准教授として教鞭をとるなど多彩な肩書きを持つ高柿健。7回目の今回は、カープの伝統といわれる“機動力野球”にスポットを当てた。

2020年7月10日の中日戦、前回登板(7月4日・阪神戦)での敗戦を糧に、先発した大瀬良大地は7回1失点と好投した。それまでに挙げた2勝が完投であっただけに、この試合でも完投が期待されていたが、大瀬良は7回を投げ、1点リードのままマウンドを下りた。結果、チームは9回に同点に追いつかれ、10回にサヨナラ本塁打で負けた。

試合終了直後、大瀬良はグラウンドでチームメートを出迎え、ねぎらっていた。前回の連載で話したように、その姿はまさにエースとしての在りようが滲み出ていた。

一流の競技者の条件に“Good Looser(よき敗者)”というものがある。これを私なりに解釈すると、どんな結果でも受け入れ、相手を称え、次へのスタートが切れる選手のことである。

勝負の世界で敗者を評価することは甘いと言われるかもしれない。だが、エースにはチームを一番に思いやることも求められるだろう。どのような結末であれ、結果を自らが背負うことのできるエースは、チームを“Good Looser”から“Good Winner(よき勝者)”へと導いてくれるだろう。